懐かしいあの時代に戻ったら 第一話 あれ、毛が生えてない

 目覚めるとそこは雪国だった。

 目覚めたとき天井を見上げながら自然と現実逃避しながらそんなことを考えてみた。

 そんなコボケをしたところで現実が変わるわけもなく、目の前には自宅であるボロアパートとは違う天井があるだけである。

 何とか現状を把握しようとあたりを見渡したところでボロアパートの一室ではない。
 しかしながら頭のどこかに引っかかる。

 そうどこか懐かしい風景のような・・・

 横島はそこまで考えると、なんとなく悪い予感がまるで心の中で警戒の鐘が鳴り響いているように感じられた。
 ひとつ大きく深呼吸をして横島はズボンを恐る恐る除いてみた。
 そこには予想どうり、しかしながらあってほしくなかった現実。

 そこには見慣れた自分のものはなく、毛もむけてもいないかわいらいしい物があるだけだ。


「何でだーーーーー」

「何とち狂った声をだしてるんだい」


 絶叫によってやってきたおふくろの懐かしい右フックによって横島の意識は刈り取られた。

 薄れゆく意識の中、不意打ちで今のフックは反則だろと毒づくのは忘れなかったが。


 再び目を覚ました時にまた同じことを繰り返しそうになったが、何とか踏みとどまることができ、二度目の折檻は回避することができた。

 それは痛みと何より再び叫びそうになったとき、おふくろの目が妖しく光るのをみてしまったせいだ。
 あの目は親父の浮気を見つけたときのお袋の目だ。
 もし叫んでいたら今度は夜まで気を失っていただろう。
 その目を思い出し、体をぶるっと震わす。

 まあ殴られた部分にぬれタオルが置かれているところ見ると一応心配はしてくれていたのだろう。

 それなら意識を刈り取るなといってやりたいがおふくろの恐怖は身にしみているので黙っておく。
 これは単に戦略的撤退で、おふくろが怖いからじゃないと自分に言い聞かせるのも忘れずに。


 とりあえず今日が日曜で助かったと思う。
 これが平日なら現状把握と心の整理をつける時間もろくになかったであろう。
 先ほどの叫びや話し方、態度がとても怪しがられたが何とかごまかして部屋から出てくることができた。

 悪の秘密結社に連れて行かれて改造されたといったところ、変な夢を見てないでさっさと飯食えとはたかれた。
 子供とはいえこんなんで納得してもらえるとはどういう風に思われているか推して知るべしだな。

 きょろきょろとあたりを見渡す。
 誰もいないことを確認すると手のひらに霊力を集中させ文殊を作ろうとする。

 しかしながら、失敗したときの霊力がうまく集中できてないものすらできずに何も起こらない。
 もしこれを見ている人がいたならばさぞ滑稽な光景であろう。

 再び気を取り直し、両手に霊力をこめる。
 手のひらに霊力が集中すると以前より手が小さくなった分だけ小さいが栄光の手と命名したものが手を覆う。

 横島は霊力が小さくなっているものの使うことができて安堵のためほっとしたように息をつく。

 あれが夢であったはずがないそうわかっている。
 しかしながらなぜか子供の姿になっており、しかし客観的に見て、すべてが夢だったというほうが正しいように思える。
 しかし、霊力が使えたことによってそれが現実であったことを証明しているのだ。

 霊波刀を出してみた後、サイキックソーサを作り出してみた。
 軌道を変えながら飛び回らせ、気に向かって狙いをつける。

 その瞬間、疲れからか急激な眠気が遅ってきて倒れていった。




 耳のそばでがさごそと音が聞こえてくる。
 少し耳障りな音に寝返りを打ち、ゆっくりと目を開ける。

「あら、目が覚めたの」

 柔らかな声がちょっと眠気を誘う。
 顔だけを動かし、声がしたほうを向くと視線が合う。
 しばらく寝ぼけたままでいるがだんだん目が覚めてくる。


「は、春香さん」

「うん、春香さんだよ」


 間違いなくこののほほんとした雰囲気の少女は夏子の姉である春香さんにまちがいはない。
 あたりを見渡すとすこし普段のイメージと違ってファンシーな部屋は夏子の部屋である。


「春香さん、俺はどうしてここに?」

「忠クンが倒れているのを夏子ちゃんが見つけてここまでつれてきたのよ」


 だんだんと思い出してくる。
 霊力を使えるか試してみたときに体が霊力を使うときに無理しすぎたのか寝てしまったのだ。
 あそこから夏子の家まではそれほど遠くないが人一人を背負って運ぶには遠い距離だ。


「夏子は今どこに?」

「さっきおトイレに・・」


 春香さんがしゃべっているうちにドアが開いた。


「よこっち、めーさめたんか」

「あー、おかげさまで。夏子が倒れてるの見て運んでくれたらしいな。ありがとな」

「そや。待ち合わせの場所にもこんから自宅に行ってもうたら、もう出た言われたさかい片っ端から寄りそうなとこ回ったんや。しかも倒れてるあんたをわざわざここまで運んできたんよ。まさかそれですむと思っとらんやろな」

「ま、確かに悪かったな。今度何か一つだけいうことを聞くということでどうや」

「一つだけね。まあええやろ。それで勘弁してやるわ」

「あら、ずるいわ。夏子ちゃんだけなの?」

「は、春香さん。これは一応お礼だから」

「私も心配したのよ。それに途中から運んできたのは私なんだから」


 にらむように見つめてくるが春香さんがおそらく抗議しているんであろうがどちらかといえばかわいらしく、まったく怖くはない。

 目線だけで夏子に合図するとこくりとうなずく。
 どうやら春香さんの言葉はホントのようだ。


「分かりました。じゃあ春香さんのいうことも一つ聞くということで」

「キャー、だから忠くんのこと好きよ」


 そういって春香さんは抱きついてくる。
 悪い気はしないが夏子の視線が痛い。


「あらあら、仲が良いわね。忠くん、お昼ご飯できたから、食べてきなさい」

「あ、でも」

「百合子には電話しておいたから気にしないでいいのよ」

「は、はい」


 いつの間にか部屋に入ってきていた夏子たちの母親の冬希さんに昼食をご馳走になった。

 その味はとてもすばらしかったが、家に帰ると約束を忘れた挙句にご飯をもらってくるとは何事だと百合子に横島は折檻された。






(あとがき)
 今回は結構変えました。
 春香さんと冬希さんの登場が一話だけ早まりました。
 せっかく子供のころに戻ったんだから夏子の出番を増やそうかなと思いまして。

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