懐かしいあの時代に戻ったら プロローグ

「うおー。くそこりゃ、しゃれになってないぞ」


 横島は走っていた。全力でこれ以上はないというぐらい全力で。

 横島の足は遅いほうではない。むしろもともと早いほうだと思う。そこらの陸上部に負けない走りをシロとの耐久マラソンによって得ている。

 しかしながら全力で走っているにかかわらず、横島を追ってきているものとの距離は離れない。

 一際は大きな音がしたので振り向いてみると巨大な大蛇が木をなぎ倒しながら迫ってきている。
 環境破壊で怒られそうな姿だが、その硬いうろこには傷ひとつつかない。
 横島は霊波刀ですら傷つかなかったそのうろこにその程度で傷がつくとは思わなかったが打撃にも強いだろう姿を見ると舌打ちをする。

 この大蛇はメドーサの眷属を思い浮かべるような姿をしているが比べ物にならないほどの霊力を身にまとっている。
 もともとがこの地の土地神であった。
 
 ことの起こりはこの土地を管理していた神社が跡継ぎ不足になったことによって始まった。
 この土地は霊穴があり、他の土地よりも霊力がたまりやすい。
 同時に陰気も集まりやすいため、神社の神主がたびたび陰気を払っていた。
 また神社のような神聖だった土地がさびれると陰気がたまりやすくなる。
 さらに神社が取り潰されてしまったことによってかの神は狂ってしまったのだ。

 しかも不幸なことに美神のところに以来はそこにたまった陰気を払い、引き寄せられた霊を払うという依頼だったのだ。基本的に力技ばかりの横島に美神が課題として霊などを払うだけではなく、土地の陰気などを払ったりする技術を身につけるさせるために。

 しかし普通ならこういったときは一人前の人が付き添うのが当然なのだが、美神がめんどくさがったためにこの依頼は横島一人でかたづけることになったのだ。


「俺が何か悪いことしたのか。何でよりによってこんなの相手にするときに限って一人なんだよ。くそ美神さんの馬鹿やろー、どけちー」


 横島が考え事している間にドカンという音とともに木の破片ががはじけ飛んできた。
 もう完全に大蛇に追いつかれたらしい。横島は何とかそれを避けながら体勢を立て直す。


「このやろう、もう少し考える時間ぐらいくれよな」

 そう悪態をつけながら、大蛇の突進をかわすとともに霊波刀で胴体に一撃を入れる。
 今度は爆の文殊の効果によってうろこの表面がこげているので切り裂くことができたようだ。

 しかし、あまりダメージを与えたようには見えず、逆に尻尾の一撃で弾き飛ばされる。
 木に叩きつけられ、何とかガードが間に合ったため致命傷庭ならなかったが、息ができなくなったようにむせる。少なくとも肋骨にひびが入ったようだ。

 何とか息を整え、大蛇が吐いた水をかわす。水と侮るなかれ、高密度では謝されたそれは木を貫き、それは地面に大きな穴を作った。
 おそらく10cmぐらいの鉄板ならば簡単に貫くほどの威力を持っているそれを見て、冷や汗が滴り落ちる。
連続して放たれてくるそれをなんとかかわしながら、横島は文殊を発動させる。


「爆はきかなかったが縛ならどうだ」


 だいぶ大蛇も文殊を警戒しているのでなかなか当てるタイミングが難しかったのだが、先ほどはじけ飛ばされるときに文殊を近くにおいておいたそれを発動させる。

 縛の文殊が発動し大蛇の動きが止まる。なおも水を吐いてくるが動きが鈍くなっているので余裕をもってかわす。
あばてている大蛇を霊波刀で何度もきりつける。
 だいぶ弱らせることができたようだとおもったが、大蛇は最後の力を振り絞ったのか縛の文殊を振りほどく。


「うそだろ、魔族の動きを止めることができた縛の文殊を振りほどくなんて」


 驚きを隠せない横島だったが動きの鈍くなった大蛇の攻撃は空を切る。
 しかしこれほどタフな相手が自由に動けるようになったら持久戦なら勝ち目はほとんどない。
 後の文殊は二つ。横島は最後の賭けに出ることにした。


「どんなに強くても蛇は蛇だろ。これでもくらえ」


 そして横島が投げた二つの文殊は霊の文字を宿したまま大蛇に向かって飛んでいった。

 ゆっくりと空中をスローモーションのように飛んでいく様に見え、痛みに何とか耐えながら横島は祈った。

 大蛇の近くについた瞬間の急激な青い光に目を横島はつぶったが、次の瞬間見えたのは凍りつげの大蛇である。何とか倒したと思った横島はへたり込んだ。

 しかしバキ、バキという音とともに氷が割れ大蛇が動き出す。横島は驚いて霊波刀を出したが、そのまま大蛇は倒れていった。


「ふー。驚かせるんじゃないよこのやろう」


 横島が緊張を再び解き地面に腰を下ろす。

 しかし次の瞬間大蛇が最後の力である液体を横島に吹きかけた。

 液体の吹きかけられた部分は熱くまるで体が溶けていきそうな感覚を横島は感じた。

(へましちまった。美神さん、おきぬちゃんもう会えそうにない。ルシオラ思ってたより早くお前のとこに行けそうだ)

 ゆっくりと横島の意識は遠のいていった。






(あとがき)
 GSのようなもの再生計画。
 ホームページが寂しいので改定をしながらあげてみようかなと。
 前の設定の様に10話完結ではなく、もう少し長くしようかなと思ってます。。
 始まりはあまり変えてませんがどんどん変えていく予定です。

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