GSのようなもの 第一話






「うおー。くそこりゃ、しゃれになってないぞ」

横島忠夫はなにやら叫びながら逃げていた。全力でこれ以上はないというぐらい全力で。

横島は足が速い。もともと運動神経は悪くない。美神によってしごかれ、いつものシロによる耐久マラソンである。本格的にGSを目指し始めてトレーニングもしている。いやでも体力はつく。
しかしながら鍛えられた横島の足でも追いつかれる勢いである。

横島を追ってきているのは一匹の大蛇。この大蛇は表面が硬いうろこで囲まれており、霊波刀をはじくという離れ業をやってのけた。
その上、爆の文殊ですら耐え切ってしまったつわものである。その間に逃げることに成功したがものすごいタフさである。そのせいだろうがこの大蛇はとても怒っているのである。

この大蛇もともとは土地神であったものが、まつられなくなり次第に忘れ去られてゆき、その土地に次第に陰気がたまっていったために妖怪となったものでとっても強かったりするのだ。

しかも不幸なことに美神のところに以来はそこにたまった陰気を払い、引き寄せられた霊を払うという依頼だったのだ。基本的に力技ばかりの横島に美神が課題として霊などを払うだけではなく、土地の陰気などを払ったりする技術を身につけるさせるために、まあ普通ならこういったときは一人前の人が付き添うのが当然なのだが、美神がめんどくさがったためにこの依頼は横島一人でかたづけることになったのだ。

「俺が何か悪いことしたのか。何でよりによってこんなの相手にするときに限って一人なんだよ。くそ美神さんの馬鹿やろー、どけちー」

横島が考え事している間にドカン、という音とともに木がはじけ飛んできた。
もう、完全に大蛇に追いつかれたらしい。横島は何とかそれを避けながら体勢を立て直す。

「このやろう、もう少し考える時間ぐらいくれよな」

そう悪態をつけながら、大蛇の突進をかわすとともに霊波刀で胴体に一撃を入れる。
今度は爆の文殊の効果によってうろこの表面がこげているので切り裂くことができたようだ。
しかし、あまりダメージを与えたようには見えず、逆に尻尾の一撃で弾き飛ばされる。
木に叩きつけられ、何とかガードが間に合ったため致命傷庭ならなかったが、息ができなくなったようにむせる。少なくとも肋骨にひびが入ったようだ。
何とか息を整え、大蛇が吐いた水をかわす。水と侮るなかれ、高密度では謝されたそれは木を貫き、それは地面に大きな穴を作った。
おそらく10cmぐらいの鉄板ならば簡単に貫くほどの威力を持っているそれを見て、冷や汗が滴り落ちる。
連続して放たれてくるそれをなんとかかわしながら、横島は文殊を発動させる。

「爆はきかなかったが縛ならどうだ」

だいぶ大蛇も文殊を警戒しているのでなかなか当てるタイミングが難しかったのだが、先ほどはじけ飛ばされるときに文殊を近くにおいておいたそれを発動させる。
縛の文殊が発動し大蛇の動きが止まる。なおも水を吐いてくるが動きが鈍くなっているので余裕をもってかわす。
あばてている大蛇を霊波刀で何度もきりつける。
だいぶ弱らせることができたようだとおもったが、大蛇は最後の力を振り絞ったのか縛の文殊を振りほどく。

「うそだろ、魔族の動きを止めることができた縛の文殊を振りほどくなんて」

驚きを隠せない横島だったが動きの鈍くなった大蛇の攻撃は空を切る。
しかしこれほどタフな相手が自由に動けるようになったら持久戦なら勝ち目はほとんどない。
後の文殊は二つ。横島は最後の賭けに出ることにした。

「どんなに強くても蛇は蛇だろ。これでもくらえ」

そして横島が投げた二つの文殊は霊の文字を宿したまま大蛇に向かって飛んでいった。
ゆっくり飛んで言ったそれを動きの鈍くなった大蛇ではかわせなかった。
青い光に目を横島はつぶったが、次の瞬間見えたのは凍りつげの大蛇である。何とか倒したと思った横島はへたり込んだ。

しかしバキ、バキという音とともに氷が割れ大蛇が動き出す。横島は驚いて霊波刀を出したが、そのまま大蛇は倒れていった。

「ふー。驚かせるんじゃないよこのやろう」

横島が緊張を再び解き地面に腰を下ろす。
しかし次の瞬間大蛇が最後の力である液体を横島に吹きかけた。
(へましちまった。美神さん、おきぬちゃんもう会えそうにない。ルシオラずいぶん早くお前のとこに行きそうだ)
ゆっくりと横島の意識は遠のいていった。


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